本文へスキップします。

会議室案内

公開情報

【お知らせ一覧・詳細】公開情報

【世界の水情報】世界銀行が国連持続可能な開発目標(SDGs)の下で水道民営化を目論む?

2016年05月17日

TNI(トランスナショナル研究所) 岸本 聡子

 2016年1月、世界の政治経済のリーダーが集まるダボス世界経済フォーラムにて、国連と世界銀行が共同でハイレベル水パネルを設置することを発表しました。持続可能な開発目標(SDGs)は安全な飲料水・衛生施設へのアクセスと持続可能な管理を確保(目標6)が含まれており、このハイレベル水パネルは 目標6の実施に貢献するために「緊急に行動を要請する」としています。このハイレベル水パネルに対し、世界中でWater Justice に取り組む市民団体はその権限、役割、統治が不透明で不明確であることに懸念を表明し、2016年4月に共同で国連事務総長パン・ギムン氏に公開質問状を送付しました。この質問状は水の公正と権利に取り組む世界各国27の団体と29の国際団体が署名しました。[1] 

 ハイレベル水パネルは現在のところ、メキシコ、モーリシャスを共同議長とし、ヨルダン、セネガル、オランダ、ハンガリー、バングラディシュ、南アフリカ、オーストラリアの政府代表者より構成されます。世界銀行の発表によると、ハイレベルパネルは目標6の達成において「民間セクターモデル」と「革新的なファイナンス戦略」

 2]を推進する模様です。すべてが明らかになってはいませんが、ハイレベル水パネルは水に関する「専門機関」の助言グループを組織することが報道されています。助言グループには水道民営化の推進で名高く、世界水会議を仕切る世界水評議会(World Water Council) の他、世界経済フォーラム(World Economic Forum) 、経済協力開発機構(OECD), ストックホルム国際水研究所などが名乗りをあげています。しかしながらこのような構成で、市民、労働者、女性、先住民、水開発の影響をうけるコミュニティーなどの声が反映されることは残念ながら考えられません。 

 私たちは過去の経験から「革新的なファイナンス戦略」が意味するのは民間資金活用だと知っています。世界銀行は過去30年に渡って、強力な民営化政策を推進してきました。しかし上下水道分野において世界銀行自身の数々のレポートで民営化が成果を出していないとこと認めているのです。2006年のレポートでは「民間によるインフラ整備 は非商業的な都市型インフラサービスの資金調達に本質的な限界がある」

 3]と認めています。ちなみに自然独占の水道セクターにおいて、民営化と官民パートナーシップ(PPP)は同義です。 

 また国連・経済社会局(UNDESA)の最新のレポートは「官民パートナーシップ(PPP)は支払(Money)に対して最も価値の高いサービス(Value)を供給するために導入されるにも関わらずそれに失敗している。失敗はプロジェクトから得られるはずのコスト削減と効率化だけでなく、長期的な財務上の損失、民間セクターの偶発的な責任回避のリスクに及ぶ。結果として貧困や持続可能な開発という社会的な目標の達成に失敗している」と言った上、「公的セクターによる投資、サービスの実施よりも、経済的、社会的見地から官民パートナーシップ(PPP)は高くつく」と結論しています。

 [4] 

 市民の公開質問状は「水道民営化が安全な水と適切な公衆衛生というすべての人の権利を実現することに多いに失敗している数々の証拠にも関わらず

 [5]、ハイレベル水パネルが民間セクターモデルと革新的なファイナンス戦略に力点をおくことに強い懸念」を表明しました。 

 持続可能な開発目標 (SGDs)の策定過程に積極的に参画してきたこれらの市民団体は、SGDsの実施において水道、公衆衛生を含むだれもが必要とする公的なサービスは、民間セクター参画や民間資金活用の圧力から守られるべきだと主張しています。少なくとも、SGDsが上下水道民営化を進める道具となってはなりません。

 市民団体はハイレベル水パネルそのものに反対しているわけではなく、このパネルが「人々の水への権利を実現することを一番の優先課題」とし「それを実現するために公的資金調達の戦略に力点を置き、水の権利を実現する義務を負う政府の責任と十分な公的資金の出動を要請するべき」だと主張しています。さらに、公開質問状は上記の「専門機関」の助言グループの構成について、名を連ねている団体が「世界銀行の水道民営化、水資源の商業化政策の拡大を助長、支援すると疑わざるを得ない」と疑問を呈し、「もしそれが実現すれば、貧困水準にある人々の安全で安価な水へアクセスする権利は否定されるだろう」と懸念します。

  市民団体は国連が水への権利の実現を含む持続可能な開発目標の達成のために真のリーダーシップをとることを要請し「グローバル水企業のロビー団体である世界水評議会の代わりに、水の権利や開発の専門家を助言者として迎えるべき」であり、特に「国連の安全な飲み水と衛生に関する人権特別報告者(Special Rapporteur)の参加」を要請しました。さらに水資源の汚染や大規模なダム開発の影響を直接受けているコミュニティーが課題設定に参画する重要性を伝えました。 

 国連事務総長とハイレベル水パネルの運営に当たる国連機関はパネルの権限、役割、統治方法について、高いレベルの情報公開と透明性を確保しなければなりません。水の公正と権利運動は今後も情報公開と対話を求めていく意向です。 


 

 [1]https://www.tni.org/en/article/global-water-justice-movement-challenges-world-banks-attempt-to-promote-privatization-of

[3]Annez, Patricia Clarke, “Urban Infrastructure Finance from Private Operators: What Have We Learned from Recent Experience?”, World Bank Policy Research Working Paper 4045, November 2006.

[4]https://sustainabledevelopment.un.org/content/documents/2288desaworkingpaper148.pdf