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【世界の水情報 】ナイジェリア ラゴス水危機: 公営水道改革のためのロードマップ

2017年02月23日

ラゴスはナイジェリアの経済商業活動の60%を担う中心的な都市であり、人口2100万人のアフリカ最大の大都市である。年間68%のスピードで人口が増加しており、近い将来世界で9番目のメガシティーになると言われている。このような大都市で、上水道接続人口がたったの約10%という状況を想像できるだろうか?一日の水需要が54000ガロンであるのに対して、ラゴス州営水道公社が生産できる上水は16300ガロンである。ラゴスの大多数の住民は、ホテルやレストラン業も含め、水道に頼ることなく独自で井戸を掘るか、規制のない水売り商人から割高で安全性の疑わしい水を買う生活を強いられている。コレラや赤痢などの感染症は日常的な問題であるだけでなく、井戸水は鉛やカドミウムといった重金属による汚染が報告されている。

 水危機が深まる中で、ラゴスの人々は公営水道が住民に安全な水道水を届けることを求めてきた。それに対するラゴス政府とラゴス州営水道公社の答えは、ラゴス州営水道公社の民営化、もしくは官民パートナーシップ(PPP)である。その背景には1980年代後半から執拗に続く世界銀行の民営化支援政策がある。世界銀行は長年に渡りローン供与の条件づけやコンサルタント業務を通じて、水道事業に民間参入を可能にするための法律変更を促し、ラゴス州営水道公社の構造改革をすすめてきた。

環境的権利行動(ERA地球の友ナイジェリア)とナイジェリア公務員組合 (AUPCTRE)は、米国のNGOなどの支援を得て、「私たちの水、私たちの権利」運動を立ち上げ、住民たちへの情報提供や対話、政策議論や要請、デモンストレーションなどを根強く行ってきた。国際的には水権利運動と連動して世界銀行のラゴス水道民営化を推進する政策介入を批判する運動を行ってきた。その運動の成果が実り、昨年世界銀行が民営化を条件としたローン供与を取りやめることとなった。「私たちの水、私たちの権利」運動はこの発表を勝利として歓迎したが、これが上記の水危機の解決に直接つながるわけではなかった。ラゴス政府とラゴス州営水道公社内に住民の水道接続を果たすための政治的なリーダーシップは希薄で、水道、公衆衛生への予算配分は低水準のままだったからだ。水需要に対応するためには圧倒的に足りない上に老朽化した水道施設への大規模な投資が必要であるのは明らかだ。しかし、ラゴス政府は依然として、PPPによって民間企業が必要な資金と技術をすべて持ってきてくれるという夢物語を楽観的に信じてPPP政策に固執し、問題解決を先送りにしている。

 このような中で「私たちの水、私たちの権利」運動は民営化ではない具体的な解決策を示す必要性があった。約一年の調査、執筆期間を経て201611月に「ラゴス水危機:公営水道改革のためのロードマップ」は発表された。世界銀行の政策に詳しい米NGOコーポレートアカンタビリティーインターナショナル、公営水道事業改革に詳しいロンドンの国際公務労連リサーチユニットとトランスナショナル研究所が共同作業をした。ラゴスの水危機の実態と政策の失敗は「私たちの水、私たちの権利」運動が担当し、世銀政策の失敗と世界での公営水道改革の成功例は国際団体が担当した。報告書はラゴス州営水道公社を民営化することなく、劇的に改革することは可能であると結論し水危機を解決するためのロードマップを示した。

 「私たちの水、私たちの権利」運動による報告書の発表イベントには、140人のコミュニティーリーダー、専門家、市民団体代表、学者、メディアが集り、オンラインも含めた10紙以上の新聞が好意的に報告書を取り上げた。報告書はラゴス州知事、国会議員、政策担当者に届けられた。報告書はあらゆるレベルで民営化のスキームを拒否し、ラゴス州営水道公社が効率的で民主的な公社に再生するための手段を政策立案者に示した。

 ERAの代表であるAkinbode Oluwafemi氏は, 「私たちは水危機のまっただ中にいるが、抗議運動を超えて、具体的な解決策を持って政府やラゴス州営水道公社とともに働く用意がある。報告書は民営化に頼る政府の現行政策「ラゴス水戦略」へのオルタナティブである」と語った。現在、政府やラゴス州営水道公社の経営団が市民、水道労働者の意見を聞く意思も仕組みもないことを指摘し「民間企業に解決を委ねるのではなく、政府は100%の水道接続を実現するための戦略を市民とともに作るべきだし、労使協力によって水道労働者が意見と経験を反映させるしくみを作るべきだ」と話した。

 
報告書は以下の政策を提言し、その理由と道筋を詳しく示した。

1、公営水道の改革は可能であり、民営化やPPPより望ましい。

2、ラゴスの水道設備投資にあたって、公的資金は民間資本よりも州政府とラゴス市民にとって適切なだけでなく安くつく。

3、水は人権であり、政府はそれを実現する責任がある。

4、公的な組織間の協力(公公連携)によってラゴス州営水道公社の能力を上げることができる。

5、政府と公社は自分たちの責任を民間企業に押し付けるのではなく、水道接続、公衆衛生といった自らの公的な責任を再確立する必要がある。

6、市民と水道労働者が参画できる仕組みを作ることで公社の透明性を高め、公営水道の民主的な組織と統治を強化する。

7、世界で最も機能していない水道公社が、世界でトップレベルの水道公社へと改革することは不可能ではない。プノンペン水道公社(カンボジア)が20年以下で20%から90%の水道接続を実現したのは段階的な 公公連携の積み重ねであった。適切なロードマップと政治的なリーダーシップは国際的な 公公連携の土壌を作る。

この報告書はラゴスの水権利運動を強化し、政府との対話のツールとして重要な役割を果たすだろう。アフリカメディア情報センター代表のChido Onumah 氏は「提案はラゴスのみに留まらず水危機を本気で解決したいナイジェリア内すべての州の政治家が読むべきである」と評価した。

 報告書の全文はこちらから入手可能(英語)

https://www.tni.org/en/publication/lagos-water-crisis-0

  写真 1027日の出版イベントにて:写真ERA提供

  

「ラゴス水危機:公営水道改革のためのロードマップ」表紙